アニメ映画 蛍火の杜へ を見た。レビューと感想、不思議な森の、温かいお話
●蛍火の杜へ、はどんな作品か。
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蛍火の杜へ(ほたるびのもりへ)、のレビューです。
緑川ゆきさんの漫画作品が原作であり、「夏目友人帳」のスタッフが制作しています。2011年公開の映画作品です。
夏目友人帳で有名な少女漫画家の緑川ゆきさんの、10年以上前の作品である、蛍火の杜へを映画化したものです。
主人公である、ほたるの声は佐倉綾音さんが担当されています。
本映画は短編映画となっており、時間も44分と短いのが特徴です。
なお、漫画も読みきり作品となっております。
以下はネタバレになりますので、まだ視聴していない方は、視聴してから閲覧ください。
●毎年訪れる、最高の夏の物語。
この作品は、夏をテーマにしています。
毎年巡ってくる夏、その時にだけ訪れる田舎で起こる物語です。
主人公である、竹川蛍(以下ほたる)は幼少期の頃、おじいちゃんの住む、片田舎に訪れます。
その田舎にある、山神の森と呼ばれる大きな森で遊んでいたある日、道に迷って帰れなくなってしまいます。
そんなほたるを心配して、様子を見に来たのが、もう一人の主人公、ギンです。
青年風の見た目(ほぼ夏目貴志)にお麺をかぶっているひょうきんな姿ですが、彼は妖怪(幽霊)のたぐいです。
山に捨てられ、死にかけていた赤子を山神様が妖術で生かし続けてくれている、そんな寂しい過去を持つ赤子が、ギンでした。
妖術はとても不安定であやういもので、人の手に触れられると消えてしまいます。
そんな境遇におかれたギンと、ほたるの物語が 蛍火の杜へ です。
知り合った当初は、抱きつこうとするほたるを、ギンが必死で避けたりするようなコミカルな展開です。
ギンの事情も知り、ほたるは徐々に受け入れ、そして、森の外まで送ってもらったほたるは、毎日ギンのところに遊びに来るようになります。
そして、夏休みも残り少なくなり、家族とともに都会へ変える日に、来年も来るという約束をします。
それから、毎年、毎年、夏になるとギンに会いにほたるは山神の森へ向かいます。
小さかったほたるは少しずつ大きくなり、わんぱくだった少女は少しずつ落ち着いていきます。
そんな夏を過ごして数年、ほたるは高校生になりました。
大きくなったほたるを連れて、ギンは妖怪夏祭りへ向かいます。
かつて小さかった少女は、立派な一人の女性になりました。
対して、ギンの見た目は変わりません。
夏祭りを目一杯楽しんだ二人は、もう夏が待てないよ、と切ないムードになります。
そんな中、祭り帰りと思われる子供が目の前で転びかけました。
慌ててギンが助けます。その腕を受け止めましたが、その子供は人間でした。
ギンは白い光に包まれ、消えてなくなろうとします、最後にほたるはギンを抱き合いました。
ギンは笑い、そして光に溶けていきました。
大人になったほたるは、山上の森がある田舎に向かいます。(おそらく就職)
●全て見終えて、感想と評価
蛍火の杜へ オリジナル・サウンドトラック 季節の瞬き
まず、原作にとても忠実な映画作品です。
セリフの一言もほぼすべて原作通りです。
二人で過ごした山の雰囲気がとても素晴らしいです。
佇む鳥居、苔むした階段、見開けた川、綺麗な池。アニメだからこそ表現できる、美しい森がそこにありました。
この森の世界観は素晴らしいと思います。
そして、ギンを心配する優しい妖怪たち、はじめはほたるに警戒心をいだきますが、ギンが溶けていなくなる頃には、
やっと人間触れたいと思ったんだね、ありがとうほたる と感謝するようになります。
主人公のほたるも、子供→大人の成長過程がうまく描かれており、
同時に共に過ごしたギンのホタルに対しての感情の変化が心地よかったです。
お互いに、夏が待てなくなる心苦しさは見ていて切なかったです。
そして、高校卒業と同時に就職し、田舎へいこうと決めたほたる、しかし現実はギンが消えてしまうという切ない結末でした。
幽霊として、成仏できた、という解釈をするのであれば、ハッピーエンドなのですが、
ほたるとギンの幸せな毎日が続いていく、エンドを期待した人にとっては悲しいのかもしれません。
子供の頃の、夏の儚い思い出、という表現がしっくり来ると思います。
よくある、子供の頃は不思議な体験をした、というような、となりのトトロ的な印象が、この映画にもあると思います。
総評しては、アニメ作品、10点満点中 10点です。私の今までの視聴歴の中でもトップクラスに好きな作品です。